激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「お、俺は日菜子を縛りつけてなんて……」
「縛りつけているだろ」

 動揺を見せた兄に、亮一さんは容赦ない言葉を重ねる。

「彰の行動は日菜子のためじゃなく、自分が安心するためのエゴだ」
「エゴだと……?」
「おじさんとおばさんの事故は本当に残念だった。だけど、日本にいたって交通事故に巻き込まれる可能性はいくらでもある。あの事故はお前のせいじゃない」

 その言葉に兄の肩が大きく震えた。
 さっきまでの剣幕が嘘のようにうつむき、力なくソファに腰を下ろす。

 兄のせいじゃないって……。

 亮一さんの発言の意味がわからない私は、眉をよせ兄を見つめる。

「お兄ちゃん。それは、どういう意味……?」

 私がたずねると、兄は「なんでもない」と固い声で言った。

「なんでもないわけないじゃない。なにか隠してるの?」

 それでも兄は口を閉ざしたままだった。
 その様子を見た亮一さんは、息を吐き出した。

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