激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい～契約結婚なのに溺愛で満たされました～
「そうやって、これからもなにも言わずに日菜子を手もとに置き続けるつもりか？　ひとりで後悔し続けるのは勝手だが、お前は日菜子を必要以上に過保護に守ることで自分の罪悪感を紛らわそうとしているだけだろ」

　亮一さんは厳しい口調で兄を責める。
　いつも穏やかな彼らしくない、わざと相手を傷つけようとする辛辣な言葉だった。

　ふたりは親友のはずなのに、どうしてこんなことを言うんだろう。

「亮一さん、お兄ちゃんが過保護なのは私が頼りないから……」

　黙っていられず兄をかばおうとすると、「違う」と絞り出すような声がした。

「日菜子が頼りないからこんなに過保護だったわけじゃない。亮一の言うとおり、俺のエゴだ。日菜子を手もとに置いて守ることで、ずっと抱えてきた罪悪感をはらそうとしていただけなんだ」
「罪悪感って……？」

　兄はなにに対してそんなに後悔しているんだろう。

「……あの旅行は、俺がすすめたんだ」
「あの旅行って、お父さんとお母さんの海外旅行？」

　私の問いかけに、兄が視線を落としたまま答えた。

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