激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「俺たちはちゃんと愛し合っている。日菜子は俺が一生かけて幸せにするから、結婚を許してほしい」

 穏やかだけど決意が込められた声だった。
 凛と前を向く彼の姿を見て胸が高鳴る。

 これは兄を納得させるためだけの嘘だってわかっているのに、どうしようもなくドキドキしていた。

「わ、私も、亮一さんを愛してるの。これからはふたりで助け合って生きていきたいと思ってる」

 私がたどたどしく言うと、重なった手がぴくりと動いた。
 どうしたんだろうと亮一さんの顔を見る。

 その横顔はわずかに赤らんでいた。

「亮一さん、頬が赤いけど熱いですか?」

 部屋の温度を下げたほうがいいかなと思いながら小声でたずねる。
 彼はこちらを見て苦笑いを浮かべた。

「悪い。照れながら愛してるって言う日菜子がかわいくて動揺した」

 そう耳打ちされ、私のほうがドキッとしてしまう。

「う、嘘つき」

 思わず亮一さんを睨んだ。

 世界各国の要人と対等に渡り合い難しい交渉をまとめるエリート外交官が、こんなことで動揺を見せるわけがない。

「嘘じゃないよ。本当にかわいくて困ってる」

 目を細め私を見つめる。
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