激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 誘うような色っぽい視線を向けられ鼓動が速くなる。
 思わずうつむくと、重なった手をぎゅっと握られた。

 指が絡みますます動揺していると、「あー、もうわかった!」と兄が怒鳴った。

「わかったから、そうやっていちゃいちゃするな!」

 兄の言葉を聞いて、亮一さんが握っていた手を離した。

「納得してもらえてよかったよ」

 亮一さんはなにごともなかったかのように、平然と微笑む。

 こんなにすんなりと切り替えられるなんて。
 やっぱり、兄を納得させるための嘘だったんだ。

 ちゃんとわかっているはずなのに、少し拍子抜けしてしまう。
 私だけが振り回されていて、ちょっとくやしかった。




「なんとか結婚を許してもらえてよかったですね」


 リビングから部屋に移動し、亮一さんとふたりきりになった私はほっと息を吐く。

 私の部屋にはソファがないのでベッドに座ってくださいと亮一さんにすすめたけれど、『さすがにそれは』と断られてしまったので、私たちは床に敷いたラグの上に座っていた。

「これで、一カ月後にはアメリカで一緒に暮らせるな」

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