激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 多分、亮一さんが頭を下げて結婚の許しを請い続けても、頑固な兄は首を縦に振らなかったと思う。

 けんかをふっかけるような真似をして。
 兄の感情を揺さぶりずっと隠していた後悔をさらけ出させた。
 そうして兄もようやく素直になり結婚を許してくれた。

 亮一さんはそれを見越してあんなやり方をしたんだろう。本当に交渉上手だ。

「結婚を認めてもらうために必死だっただけだよ」

 彼は涼しい顔で否定するけれど、全部計算だったんだと思う。

 兄に対する厳しい言葉だけではなく、甘い言動で動揺させて私を照れさせたり、兄の前でわざといちゃいちゃしたり。
 すべての行動が私たちが付き合っているという嘘に説得力を持たせ兄に結婚を認めさせるためのものだ。

「なんだか亮一さんの手のひらの上で転がされている気がします」

 私がそう言うと、彼は小さく笑った。
 否定しないということは、実際私は彼の思い通りに振り回されているんだろう。

 私がどうあがこうが、亮一さんに勝てる気がしない。

 そんなことを考えていると、彼がローテーブルに置いてあった雑誌に目をとめた。

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