激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「日菜子はこの雑誌を読んでるのか?」

 亮一さんが手に取ったのは、アメリカの経済紙だ。

「あ、はい。一応商社で働いているので、海外の経済情勢を知っていても損はないかなと思って」
「この雑誌ならオンラインで日本語版が読めるのに、わざわざ英語版を取り寄せているのか」
「英語版を読んでいると、普段は触れない専門的な単語が出てくるのでおもしろくて」
「すごいな。商社の営業だってそこまで勉強熱心なやつはなかなかいないだろ」

 亮一さんに感心され、恥ずかしくなった。

「私がこんなの読んでも無駄ですよね。元カレにも嫌な顔をされました」

 康介は私が英語の経済紙を読んでいると知って、不機嫌そうに眉をひそめた。

『契約社員のお前がそんな雑誌を読んでなにになるんだよ。女ならファッション誌を読んでいればいいだろ』

 その康介の言葉は女には知識は必要ないと決めつけているような気がして納得できなかった。
 けれど、『意識が高い女って、めんどくせぇ』とつぶやかれ、なにも言い返せなかった。

 そのときのことを思い出し、気分が落ち込む。

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