激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 迷うような言葉を口にしながらも、彼は慌てる私を見て楽しんでいた。

 普段は紳士で優しい亮一さんが、こういうふうに意地悪になるなんて知らなかった。
 上品に笑っているときよりも色気が増している気がする。

「お願いだから……」

 このままじゃ、心臓が爆発してしまう。

 私がつぶやくと、大きな足音が近づいてきた。
 亮一さんが私の手を離したと同時に、背後のドアが乱暴に開かれた。

「なにやってんだ!」と兄が怒鳴る。
「ちょっと、お兄ちゃん勝手に入ってこないでよ!」

 私はドキドキする心臓を抑えながら、床から起き上がる。

「今不埒なことをしようとしてただろ!」
「し、してないから!」
「いや、しようとしてた。俺にはわかる」

 兄はそう言い張る。別に大きな声を出していたわけじゃないのに、するどすぎるんだけど。

「結婚は認めたけど、この家でへんなことをするのは許さないからなっ!」
「だから、なにもしてないってば!」

 言い合いをする私たち兄妹を見て、亮一さんはくすくす笑う。
 すると早苗さんがやってきて、思い切り兄の頭を叩いた。

「ごめんね日菜子ちゃん。彰が邪魔して」
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