激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 お母様は凛とした印象の美しい女性で、美容好きが高じて小さなエステサロンを経営しているそうだ。

「経営者だなんてかっこいいですね……!」と私がため息を漏らすと、「趣味みたいなものだから」と明るく笑ってくれた。とても気さくな雰囲気の素敵な人だった。

「それにしても、亮一が結婚する気になってくれてよかったわ」

 私たちが結婚の挨拶をすると、お母様がほっとしたように微笑む。

「本当は、亮一さんには縁談のお話があったんですよね……?」

 恐る恐るたずねる。
 お見合いの約束をしていたのに急に結婚すると言い出すなんて、迷惑だったのでは……。

「亮一にお見合いを勧めたのは、結婚して安らげる場所をつくってほしかったからだよ。心に決めた女性がいるなら、その人と一緒になってくれるのが一番だ」

 不安な顔をする私に、お父様がそう言ってくれた。

「亮一の仕事は日本の国益と邦人を守ることだ。そのためにあらゆる情報を得て各国の要人と交渉する。ときには薄汚い外交駆け引きも必要になる。清濁併せのんでこそ、国の利益を守っていける」
「はい」

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