激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 私も外交官を目指していたから、華やかな印象だけではない責任の重さや水面下での苦労をある程度はわかっているつもりだ。

「だからこそ、仕事を終え疲れて家に帰ったときに亮一を出迎えてくれる人がいてくれたらいいなと思っていたんだ」

 お父様の言葉に胸が温かくなる。
 海外で活躍する亮一さんを、心から応援しているんだ。なんて素敵な家族なんだろう。

 私が感動していると、お母様がくすくすと笑い始めた。

「っていうのは建前で、本当は早く孫を抱きたいのよね」

 予想外の言葉に、私は「え?」と目を瞬かせる。

「うちは亮一を長男に息子が三人もいてね、暑苦しいったらないのよ。だから、素敵なお嫁さんを連れてきて、ついでにかわいい孫を抱かせてもらえたら最高だなっていつもふたりで話していたの」
「母さん。どうしてばらしちゃうんだ。せっかく私が父親らしいことを言ったのに、台無しじゃないか」

 お母様の言葉に、お父様が頬をふくらませた。

「あら、日菜子ちゃんとは家族になるんだから、かっこつけたってしょうがないじゃない」
「まぁ、そうだが」
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