激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「日菜子ちゃんみたいなかわいいお嫁さんが来てくれて、あなたもうれしいでしょう?」
「たしかに。家の中が華やかになった気がする」

 お母様とお父様はそう言ってうなずき合う。

「日菜子ちゃんが一カ月後にアメリカに行っちゃうのは寂しいけど、いつでも日本に帰って来てここに遊びに来てね」
「はい。ありがとうございます」
「あとね、孫は男の子でも女の子でも思いっきりかわいがるから、性別なんて気にしないでね」
「息子たちが小さかった頃は仕事が忙しくてね。気がつけば大きくなっていたから、孫の成長はじっくり見守りたいんだ」

 ご両親は私たちの間に赤ちゃんが生まれることを楽しみにしているんだ……。

 どうしよう。
 恋愛感情のない私たちが子どもを授かることはないのに。
 こんなに気さくで素敵なご両親を騙しているんだ。

 罪悪感に襲われ胸が痛くなる。

 私がうつむいたとき、亮一さんが大きくため息をついた。

「孫の話なんて気が早すぎる。日菜子にプレッシャーをかけないでくれ」
「あら、いいじゃない。楽しみなんだもの」
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