激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 お父様がもらした言葉を繰り返す。

 亮一さんは仕事が忙しいせいでずっと彼女がいなかったって言っていたけど、本当は好きな人がいたから……?

「父さん。そういえばNGOのアドバイザリーグループに参加するんだって?」

 亮一さんが穏やかな口調でお父様に話しかけた。

「よく知っているね。どうしてもってお願いされたんだ。亮一はODAにも興味があるのかい?」
「あぁ。開発協力企画室からの話はよく聞くから、国際協力の情報は気にするようにしてる」

 ふたりは専門的な話をはじめる。

「やあねぇ。すぐ仕事の話をはじめて。ごめんなさいね、亮一は本当に仕事バカで」

 顔をしかめたお母様に、「いえ」と微笑み首を横に振る。

「真剣に仕事に向き合う人は、とっても素敵ですから」
「そう言ってもらえてよかったわ」

 お母様と話をしながら、ちらりと亮一さんの横顔を見る。
 胸のあたりに痛みを感じた。

 亮一さんはさりげなく話題を変えた気がした。

 でも。もしそうだとしたら、どうしてごまかしたんだろう。

 私たちは契約結婚だ。
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