激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 亮一さんがずっと片想いをしていた女性がいたって別に問題はないのに……。

 そう思いながらも、少し寂しさも感じた。


 もしかして私は、その女性のかわりなんだろうか。
 そんな疑問が胸をよぎる。



「そういえば、結婚式はどうするの?」

 お母様の質問に、亮一さんは静かに首を横に振る。

「籍だけ入れて、式はあげないつもりだ」
「えぇー! こんなにかわいいお嫁さんをもらってドレスも着せてあげないなんて。私は自分の息子をそんな甲斐性なしに育てた覚えはないわよ」
「アメリカに赴任中なんだから、仕方ないだろ。帰国してから考える」
「せめて写真だけでも撮ったら? 私の仕事関係でいいスタジオを紹介できるわよ」

 言い合うふたりに、「いいんです」と割って入った。

「日菜子ちゃん、遠慮しなくていいのよ。ウエディングドレスは女の子の夢だもの」
「遠慮しているわけじゃないんです。私は、亮一さんと一緒にいられたらそれで十分なので」

 ウエディングドレスには憧れているけど、私と亮一さんは二年後には別れるんだ。
 ふたりで結婚写真を撮っても、きっとむなしくなるだけだ。

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