激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 そう思うと、なぜだか寂しくて少し泣きたくなってしまった。

「まぁ、本当にいい子なんだから……っ! アメリカから帰国したら、私がたっぷり甘やかしてあげるわね!」

 お母様に力強く手を握られ、涙をこらえながら「ありがとうございます」となんとか笑った。


 


 それから亮一さんとふたりで区役所へ行き、婚姻届けを提出した。


 結婚は自分の名字や戸籍が変わる一大イベントだと思っていたけれど、実際は時間外窓口に書類を預けるだけで、あっけなく終わった。

 不備がなければ連絡がくることもなく、これで手続きは終了らしい。

 駐車場に止めてあった車に乗り込み、ほっと息を吐く。

「なんだか実感がないですね」

 拍子抜けしていると、亮一さんが小さく笑った。

「氏名の変更手続きをしないといけないものはいやというほどあるから、それをこなしているうちに実感がわいてくるんじゃないか?」
「それはたしかに」

 銀行口座に保険関係。クレジットカードやスマホの契約。手続きしないといけないものはたくさんある。

< 80 / 231 >

この作品をシェア

pagetop