激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 瀬名日菜子という名前は、まだ違和感があってしっくりこないけど、様々な手続きをしているうちに慣れていくのかもしれない。

「総務のほうに書類を出して手続きをしておく。日菜子には一般的なパスポートのほかに外交旅券が発行されるから」
「わかりました」

 一カ月後、私は亮一さんの妻としてアメリカに行くんだな。なんだかまだ現実味がない。

「アメリカで暮らすために、用意しておいたほうがいいものってありますか?」

 私の問いかけに、亮一さんは「いや。なにもいらない」と首を横に振った。

「必要なものはすべてそろえておくから、日菜子は身ひとつで来てくれればいい」
「身ひとつで?」
「あぁ。逆に用意しておいてほしいものがあれば言ってくれ。日菜子がアメリカで快適に暮らせるよう最善を尽くす」

 そう言い切る亮一さんに、小さく噴き出してしまった。

「お兄ちゃんも過保護ですけど、亮一さんも人のこと言えませんよね」
「そうか?」
「そうですよ。身ひとつで海外に移住なんて、お姫様待遇じゃないですか」

 私が苦笑しながら言うと、亮一さんは私を見下ろし目を細める。

「お姫様じゃなくて、大切な妻だよ」
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