激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「妻って……っ」

 甘い声でささやかれ、妻という言葉の響きに動揺してしまった。

「婚姻届けは出した。もう日菜子は俺の妻だ」

 私に言い聞かせるように繰り返す。

 亮一さんは私の旦那様なんだ。こんなにかっこよくて素敵な人が……。そう自覚して、頬が熱くなっていく。

「日菜子と一緒に暮らせるのは、一カ月も先か。長いな」
「あ、そうだ。亮一さんはいつアメリカに戻られるんですか?」
「明日、本省に顔を出してから空港に向かう予定だ」
「大忙しですね」

 数日の帰国で私との結婚を決め、家族に挨拶をして入籍まで済ませ、明日にはアメリカに帰ってしまうなんて。
 ものすごいハードスケジュールだ。

「日菜子は明日から大丈夫か?」

 複雑そうな表情でたずねられ、「なんのことですか?」と首をかしげた。

「仕事に行かなきゃならないだろ」
「あ……」

 亮一さんの言葉で、金曜に起きた出来事を思い出す。


 会社に行ったら康介や野口さんと顔を合わせることになるんだ。

 恋人の康介に浮気をされ、私は会社を辞めることにした。
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