激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 この問いかけにうなずいたら、いったいどこにキスをされてしまうんだろう。
 想像して体が熱くなった。

 どうしよう。心臓が爆発しそうだ。

「りょ、亮一さん……、だめです。私たちは契約結婚なんですから……っ!」

 必死にそう言うと、亮一さんが動きを止めた。

 彼はゆっくりと息を吐き出し顔をあげる。さっきまでのしたたるような色気が消え、いつものように静かに微笑む。

「悪い。日菜子がかわいから、ちょっといじめたくなった」

 どうやらからかっていたらしい。
 私はこんなにドキドキしたのに。
 人の気もしらないで。

 亮一さんが助手席の背もたれを直してくれた。
 私はまだ痛いくらい脈打つ心臓を抑え息を吐き出す。

「もう、びっくりしました」
「いやだった?」
「いやではないですけど……。こんなふうにからかわれたら、心臓が持ちません」

 抗議の気持ちをこめて睨むと、亮一さんは小さく笑い私の頭をなでてくれた。
 その優しい手の動きにほっと息を吐き出す。

「でも、そのおかげで彰に俺たちの仲を信じさせることには成功したみたいだ」
「え?」

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