激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 亮一さんの視線の先を見ると、窓にへばりつく兄の姿があった。
 鬼のような形相で私たちを睨んでいる。

「今の、兄が見てたんですか……っ?」

 動揺する私に向かって、亮一さんは「あぁ」と微笑んだ。

「彰が見ているから少しいちゃいちゃしておこうと思ったんだ」

 そういうことですか……!と脱力する。

 今のは兄を信用させるための演技だったんだ。
 私はものすごくドキドキしたのに……。

 思わず両手で顔を覆って恥ずかしさをこらえていると、亮一さんがシートベルトを外した。

「彰に挨拶していく」

 そう言い車から降りると、助手席のドアを開けてくれる。

「挨拶なんて。わざわざ気を使わなくてもいいんですよ?」
「一応彰はかわいい妻の兄だからな」
「そっか。籍を入れたから、亮一さんはお兄ちゃんの義弟なんですよね。不思議な感じ」



 ふたりそろって玄関に行くと、険しい顔をした兄が仁王立ちしていた。



「お前ら、ところかまわずいちゃいちゃするんじゃねぇ!」

 ものすごい剣幕で怒鳴られ首をすくめる。
 そんな私の隣で亮一さんは相変わらず涼しい顔をしていた。

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