激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「ねぇ康介さん。早川さんと私、どっちが気持ちいいですかぁ?」
「そりゃお前だよ。あいつは抱いてやっても反応は悪いし声も出さないし、退屈でしかない」

 その言葉が胸に突き刺さる。
 思わず口もとを手で押さえた。

 たしかに私は恋愛経験がなく、康介がはじめての彼氏だった。
 セックスはもちろん、キスしたのも手をつないだのもはじめてで、戸惑って照れてばかりだった。

 康介はそんな私をかわいいと言ってくれていたのに。
 本当はつまらないと思っていたんだ……。

「日菜子よりお前のほうが断然いいわ」
「わー、早川さんと結婚の約束してるのに最低」
「それな。ほんとダルイ」

 野口さんの言葉に、康介は心底いやそうにつぶやいた。

「あいつの家、両親が死んでて兄貴しかいないんだよ。その兄貴がめちゃくちゃ過保護らしくてさ、一度挨拶に来てほしいってすげぇうるさくて」
「そうなんだぁ」
「それで仕方なく結婚の挨拶に行くって言ったんだけど、めんどくさくなってきた」

 たしかに私の兄は過保護だ。

 兄は事故で無くなった両親のかわりに、まだ高校生だった私を支えてくれた。
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