激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 日本に帰ってきたら、聡美にたくさん話を聞いてもらおう。
 そのときの思い出話が楽しいものだといいな。

 そう思いながら笑い合う。

「でもよかった。日本を離れるなら、日菜子が内藤さんにほだされてよりを戻す心配はないわね」

 聡美の言葉に苦笑いをする。

「日本にいたってそんなことにはならないよ」
「そう? 日菜子はお人よしだから、『やっぱりお前が好きだ。よりを戻してくれ』って土下座されたら許しちゃいそう」
「ありえないよ。そもそも康介は最初から私のことを好きじゃなかったみたいだし」
「それこそありえないよ。内藤さん、日菜子がここで働き始めたころからずっと好きだったらしいよ。男性社員たちの間で牽制しあってたけど、内藤さんが抜け駆けしたって恨み言をよく聞くもん」
「まさか」

 聡美は私をなぐさめるために話を盛っているんだろう。

「日菜子は本当に自分のことをわかってないなぁ」

 そんな話をしていると、私たちのテーブルの横を先輩の女性社員が通りかかる。

「早川さん。これあげるわ」と私の前に小さな器を置いた。

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