囚われのシンデレラ【完結】
「――んっ」
きつく背中を抱きしめ、片方の手が私の頬から耳にかけてを包み込むように押さえ込んで。いきなり深く深く唇をこじ開けられる。
西園寺さんとの間に少しの隙間も作りたくなくて、自らも腕をきつく回した。
「あず、さ――」
これまで見て来た西園寺さんとは別人のように、荒ぶる手と唇で私を絡めとる。
重ねる唇の角度を変えるたびに「好きだ」と言って、そしてまた塞いでは激しく口付けた。
夢中でキスを繰り返し抱きしめ合いながら、もつれる足で廊下を進むと、一つのドアに背中を押さえつけられた。
「今すぐあずさを感じたい。いいか……?」
至近距離で向かい合う西園寺さんの唇が熱っぽく囁く。
その熱く滾る視線が、私の全身を別人に塗り替える。ただ、目の前の人のすべてを欲しいと思うだけの女になる。
「――ごめん。やっぱり、あずさの返事を聞く余裕はない。ダメだと言われても、止められない」
西園寺さんが私の背中の裏でドアを勢いよく開け、そのまま部屋に置かれているベッドに私を押し倒した。
そこは、未だ見慣れない西園寺さんの寝室。すぐにのしかかって来た身体が、私を組み敷く。
「……ずっと触れたかった。触れたくて抱きしめたくて、自分を抑えるのがどれだけきつかったか」
私に向けられた切なく擦れた声と視線に、甘く胸が疼く。
「私もです。私もいつもあなたに触れたかった」
「あずさにそんなこと言われたら……俺は、どうにかなってしまう――」
そう言い終えた唇がすぐに重ねられて。
その切羽詰まった口付けに、あっという間に息が上がる。
甘い痺れが全身に行き渡る。
「あずさ、好きだ」
「私、も……ぁっ」
西園寺さんは私が裏切ったと思っている。
もう、私のことなど見てくれないと思っていた。
こんな風に、名前を呼ばれ好きだと囁かれながら、抱かれることはないと思っていた――。
過去の誤解を解かなければと痺れる頭で思うけれど、今はただ、抱きしめてくれる温もりを少しも残らず私のものにしたい。
一刻も早く、抱き合いたい。
「早く、あずさと繋がりたい」
唇を重ねて舌先を絡み合わせながら、素肌に触れたくて無我夢中で着ているものを脱がせ合う。
逸る気持ちに追いつかなく、てうまくできない。
いつもの隙のない姿が嘘みたいに、西園寺さんは、着ていたスーツの上着をひったくるように脱ぎ投げ捨てた。
そして、乱暴に濃紺のネクタイを掴んで引き抜く。
その姿に、眩暈を覚えるほどに自分が欲情するのが分かる。