囚われのシンデレラ【完結】
「――だから。あずさが自分を責める必要はない。公香さんのことは気にするな。俺が考えるべきことだ」
私を抱きしめていた腕が離れて行く。
「……すまない。こんなこと、一生言うつもりはなかった。あずさを困らせるだけなのは、分かっているから」
「だって、西園寺さんは、私に愛情なんてないって――」
一切感情は残っていないと私に言って。
私を突き放し続けて。この結婚だって、ただの契約で――。
この部屋で一緒に暮らして来た時間を振り返っても、ただ頭が混乱する。
「そうするつもりでいた。でも、あずさを前にして、そんなこと無理だったんだ。抑え続けて来たのに、結局こんな風にあずさに言ってしまった」
そう言った西園寺さんが、私に背を向けた。
西園寺さんも、私を想ってくれていた――?
「でも、何も変わらない。これまで通りにしてくれればそれでいい。あずさは、何も気にせずに今までどおり――」
「私も、好きです。西園寺さんが好きなんです……っ」
既に胸を一杯にしていた気持ちが涙と一緒になって溢れ出し、その腕にしがみついていた。
「何を、言って――」
「ずっと、言えなくて苦しかった。西園寺さんのことが好きでたらまないのに、一緒に暮らしているのに言えなくて……」
もう、だめだった。
触れたくて、伝えたくてたまらなかったのだ。もう、止められない。
「好きなの。西園寺さんが、好き」
「……あずさ」
その手が、恐る恐る私の頬に触れる。西園寺さんの腕に埋めていた顔を、上へと向けさせられて――。
「好きです」
見上げた先にあった切なげに揺れる目が滲む。お互いの視線が交わった瞬間、視界が暗くなった。
「あずさ――」
何もかもを振り払い、ただ私を奪い去るみたいに強く抱き寄せ唇を塞いだ。