囚われのシンデレラ【完結】
「……た、頼む。公香が命を取り留めても、生きて行く希望がなければまた同じことをしてしまう。この通りだ。公香の傍にいてやってくれ。公香を選んでくれ……っ」
今まで、自分が望めば何でも手に入って来たのだろう。金や地位だけでなく人さえも。
だから、こうまでも他人にも想いがあることを考えない。
「あなたがそうやって大切な人のために必死になるように、私にも大切な人がいる。私が守るのは妻だけだ。それに、妻は公香さんを傷付けるようなことは一切していない。妻という立場で当然のことをしたまでのこと。妻を責めるなどお門違いもいいところだ。それを伝えに来た」
「私が、ここまでしているというのに――」
床にこすりつけていたはずの頭を上げ、俺を睨みつけた。
「公香に何も思うことはないのか? 命まで失おうとして、今まさに死ぬかもしれないというのに、愛情はなくても、せめて憐れむ気持ちはないのか……?」
「私も、覚悟を持ってここに来ているんです」
鬼になる覚悟をしている――。
床に座り込む会長に、深く頭を下げた。
「公香さんが目を覚まされることを心から祈っています」
「この、ろくでなしが――っ」
次の瞬間、張り詰めた拳が俺の口元をぶち抜いた。
「それでもおまえは、人の心を持った人間なのか!」
殴られた口元を手で拭う。
「殴って気が済むのなら、いくらでもどうぞ」
そう言うと、漆原会長は顔を真っ赤にして俺を見た。
「もう、おまえなど必要ない。ただし、公香だけが苦しむままにはしない。貴様がそんな態度を取れるのも今のうちだ。報いは必ず受けることになる。それを覚えておけ」
最後にそう言い捨て、俺に背を向けた。