囚われのシンデレラ【完結】
「……西園寺、さん?」
「ごめん。起こしたか?」
耳に届いた掠れた声に、慌てて身体を離した。
「私、練習していて、それで……」
重たそうな目蓋を瞬かせながら、身体を起こし俺を見上げる。
「そうみたいだな。ソファで寝てしまっていたからベッドに運んで来たんだ」
「すみませんでした。あれ、ここ……」
あずさが部屋を見回した後、再び視線を俺に向けた。
「俺の部屋だ。嫌、か?」
ぶんぶんと激しく頭を振ってから、俺の腕を掴んだ。
「その逆です。ここに運んでくれて、嬉しい」
どこか恥ずかしそうな姿に、胸の奥が疼く。
「あの……お仕事、忙しかったんですか?」
「ああ。遅いから、あずさももう寝ろ。俺もすぐに寝るから」
「そうですね。明日もまたお仕事だし――あれ、西園寺さん、ここ、どうしたの?」
何かに気付いたのか、細い指が遠慮がちに俺の口元に触れた。
「あ、ああ……」
漆原に殴られたところか。
「帰り際に少し転んだんだ。遅い時間だったから、寝ぼけていたのかも」
我ながら無理のある嘘。それでも、なんとか笑って見せた。
「気をつけてくださいね。西園寺さん、ここのところ疲れているみたいで心配です」
間近で俺を見つめ、触れるその手を包み込むように掴む。そして、そのままあずさの身体を腕の中に閉じ込めていた。
「大丈夫。今日は、ぐっすり寝られそうだから」
「少しでも、ゆっくり寝てくださいね」
あずさが俺の腕の中で、背中を抱きしめ返してくれて。その温もりに優しい声に、たまらなくすがりたくなる。離れがたい衝動を必死に抑え、あずさの身体をベッドに戻した。
「……あずさ、おやすみ」
「おやすみなさい」
その柔らかな髪を撫で、あずさが目を閉じるのを見届けた。