囚われのシンデレラ【完結】

「もう、信じてもらえないだろうと思っていたから言えなかった。でも、諦めたままではいられなくて。信じてもらえなくても伝えようって思ってたの。私は、西園寺さん以外の人を好きになったことなんてない」
「あずさ……」

その目を見ていられなくて、顔を背ける。込み上げるものが零れないように硬く目を閉じた。

「7年前、斎藤さんが私に会いに来ました。西園寺さんの置かれている状況を聞いて、私には何の力もないから離れることが西園寺さんのためになると思ったんです。
だからね、この7年、辛くもあったけど、西園寺さんとのことは幸せな思い出だった。でも、西園寺さんは違う。私よりずっと苦しい7年だったはずです。だから、もうそんなに自分を責めないでください」

手のひらで顔を覆い、ただ何度も頭を振る。

「それに、私だって同じ。言われるままに、西園寺さんからもらった鍵を斎藤さんに返したんです。あの時、西園寺さんは最後の最後まで私のことを信じようとしてくれていたのに。写真を見ても調査報告を聞いても西園寺さんは私をかばってくれたと聞きました。それだけ、私のことを愛してくれていたんですよね」

あずさの声が涙に濡れる。

「ごめんなさい。結局私はいつも、何もしてあげられなかった。7年前、西園寺さんは一人で闘っていたんですよね」

震える声で、あずさが言葉を紡いだ。

「自分を裏切ったと思っている女に手を差し伸べた。母を助け、私にもう一度バイオリンを弾かせて。私が傷付かないようにと、斎藤さんを遠ざけ、公香さんが会いに来た時も駆け付けてくれた。私に好きだと打ち明けてくれたのも、私が公香さんに対して抱いた罪悪感を無くすため。そうやって私をいつも守ってくれた」

もう何を言葉にしたらいいのかも分からない。

そんなことが、本当にあずさを守っていたことになったのか。

公香さんの自殺未遂の衝撃から間もないのに、こうやって傷を一つ積み重ねさせた。

あずさの声は、胸が締め付けられるほどに苦しげで。その胸の痛みが手に取るように分かる。

この手が、あずさに触れることを恐れてしまう。
< 280 / 365 >

この作品をシェア

pagetop