囚われのシンデレラ【完結】

「お願いです。私と一緒にいるって言って? 他に何も望まないから、お願い……」

今、そばにいる西園寺さんをずっとずっと私だけのものにしておきたい。もう、二度と離れたくない。

「お願いだから――」

次から次へと涙が込み上げて嗚咽が漏れる。

「別れる、って、こと以外は、全部、西園寺さんの、言う通りにします。少しの間、離れていた方がいいのなら、そうする。だから、私からあなたを奪わないで……っ」

言葉を吐けば吐くほどに息が苦しくなるけど、言わずにはいられない。懸命に呼吸をしながら無理やりに口を開く。

「あずさ、もう無理に喋るな。息が出来なくなる」

激しく上下させる私の肩を掴み、大きな手のひらが背中をさする。

「息を吸って。ゆっくり吐いて」

西園寺さんの声に合わせて呼吸をする。取り乱し泣きじゃくる私を、西園寺さんが抱きしめた。その腕が哀しいほどに優しい。

「お願いだから、別れるなんて、言わないで――」
「あずさの気持ちは分かったから、今は、もう何も言わないでいい。もう、泣くな」

どこか弱り切った声が頭上から降って来る。背中を何度も優しく手のひらが往復する。それがとても切ない。

(あずさ、ごめん……)

西園寺さんから小さく漏れ出た言葉と同時に、優しかった手のひらがきつく私を抱き寄せた。そうして間近になった西園寺さんの胸の鼓動と、手のひらの力が私に向かって来る。

西園寺さんを苦しめているのかな――。

でも。どうしても肯けない。

 ずっと抱きしめてくれていたおかげで、少しだけ落ち着く。そして、重い口を開いた。

「今日、お仕事は?」
「ああ、今日は一日休みを取った。あずさと一日一緒にいる」

私の背中に置かれていた手の力が緩み、髪を滑るように撫でる。
休みを取ってまで時間を作ったことが、私を説得するという西園寺さんの固い意思の表れみたいで哀しい。
涙でぐしゃぐしゃになった顔に、西園寺さんの長い指が触れた。涙を拭うその表情にハッとする。

辛いのは私だけじゃない。

この3日間、西園寺さんがどんな風に過ごしていたのか私には分からない。ただ、大変な時間だったであろうことは西園寺さんを見れば分かる。きっと、睡眠すらろくに取っていない。

「……ごめんなさい。自分のことばかりで、言いたいこと言って」
「いいんだよ」

何よりまず、西園寺さんの身体を気遣ってあげなければならなかった。

「あずさが悪いことなんて、一つもないんだから」

大きな手のひらが包み込むように頬を覆う。

< 304 / 365 >

この作品をシェア

pagetop