囚われのシンデレラ【完結】
なんとか、予定通り10分前に控室にたどり着くことができた。
本当ならもっと時間に余裕を持つべきなのは分かっている。でも、他の音大生よりもアルバイトをしている身としては、時間の許す限り練習をしたい。そう思うと、ついつい、ぎりぎりまで練習室にこもってしまうのだ。
結局この日も、気付いたら予定よりも練習時間を伸ばしてしまっていた。
とりあえず、バイオリンの確認を――。
愛用しているミント色のケースをテーブルの上に置く。いつも私の無理な行動からバイオリンを守ってくれている、しっかりものだ。差し込み式の鍵になっているため、キーを取り出す。
あれ……。
もう一度鞄の中を探す。
ない。いや、そんなはずはない。
もう一度、今度は念入りに探す。それでも、いつもあるべきはずの場所にない。
身体中から血の気が引いて行くとは、こういうことを言うのだろう。
どうしよう――!
アルバイト初日に、肝心のバイオリンがないなんて、そんなの許されるはずはない。
一緒に演奏する人との音合わせまで、あと10分。お客さんの前で演奏を開始する11時まであと40分。
どうするべきか。ここはまずこの状況をアルバイトの責任者の人に伝えなければならない。