囚われのシンデレラ【完結】
「――え? 鍵がない?」
「本当に申し訳ありません。今朝大学で練習した後、間違いなく鍵をかけたので、失くしたのはその後なんです」
「じゃあ、もう一度よく探して。あと10分探しても見つからなかったら、チェロとピアノでできる曲目に変更するから」
「申し訳ありませんっ!」
いたたまれなさに頭を下げた後、すぐに鍵を探すべく部屋の外に出た。
どうか、ホテル内で失くしていてほしい。そうでないと、もう絶望的だ。スペアキーを家から持って来てもらうとしても、時間的に間に合わない。
あ――。
鍵を落とすとしたら。一つの可能性が思い浮かぶ。
ホテルの玄関でぶつかった時――?
思い浮かんだ次の瞬間にはもう駈け出していた。
演奏をすることになっているラウンジはエントランス脇にある。控室からも玄関は近い。幸いなことにすぐにそこに向かうことが出来た。
鍵は小さな巾着袋に入れている。
落ちていればすぐに見つかるはず――。
大理石の埃一つ落ちていない磨き上げられた床を目を皿のようにして探す。チェックアウトを済ませた宿泊客たちがエントランスを行き交う中で、一人無様に這いつくばる。
「――ちょっと」
今にも火花でも散りそうな目で床を睨みつけていた時、どこからか声を掛けられた。
「は、はいっ」
その声とともに差し出された手のひらに驚く。
「もしかして、これ、探してる?」
そこにあったのは、まさに今私が探しているものだった。