死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
ルヴェルグはしばし考え込んだ後、胸の前で組んでいた腕をほどいた。とても良いことを閃いたのだ。
「クローディア。ひとつ条件があるのだが、聞いてくれるか?」
クローディアは小首を傾げた。どのような条件を提示してくるのだろうか。無理難題でなければいいとクローディアが身構えたのも束の間、ルヴェルグは爽やかな微笑みを浮かべながら口を開いた。
「子をひとり私にくれ。帝国の跡継ぎにしたい」
「………はい?」
クローディアは手に持っていた紅茶のカップを落としそうになった。つい先日ローレンスから貰ったこれは、他国の名産品であり花の香りがすることで有名な物だ。
無駄にならなくて良かったとほっと胸を撫で下ろしたが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「名案だと思わないか? 私の世継ぎ問題が解決するうえ、女を娶らずに済む。そなたと殿下の子ならば、男女どちらでも美しく優しく聡明になるだろうな」
硬直しているクローディアを余所に、ルヴェルグはうんうんと頷いている。
「あの、皇帝陛──ルヴェルグ兄様。私とリアンはっ…」
子を作るつもりなど──ましてやそのような関係になることなどないとクローディアは言いかけたが、慌てて口を噤んだ。
「ん? どうしたんだ?」
不思議そうな目で見てくるルヴェルグに「何でもご
ざいません」と言い返し、クローディアは今度こそ紅茶に口をつけた。