死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
ルヴェルグの知るクローディアは、子供の頃からよく寝込んでいてばかりいたせいか、いつも大人しくて控えめで、慎ましい少女だった。
乳兄妹であり従兄弟でもあるベルンハルトと共に育った影響か、好きなものや惹かれるものがあると、目を輝かせながら食いついてくる一面もあるのだが。
また、困り事や何かを選択する場面では、常に助けを求めるような目でエレノスを見上げていたというのに、いつの間にか、思ったことをはっきりと伝えられるようになっていたことに、ルヴェルグはとても驚いていた。
「そうか。皇帝として、何の利益も得られない国に嫁がせるのは気が進まないが、ディアがそう言うのならば──」
「私が嫁ぐのではありません」
ルヴェルグは耳を疑った。それはどういう意味なのかと問いたげな目でクローディアを見る。
「私が嫁ぐのではなく、殿下が婿養子となり、帝国の皇族の一員となられるのです」
ルヴェルグがクローディアの言葉の意味を理解するまで、随分と時間がかかった。
(──嫁ぐのではなく、婿養子?)
婿養子は珍しいことではない。跡取りの男児がいない貴族が、別の貴族から次男三男を婿にしてそのまま家を継がせるというのはよくある話だ。だが、皇族間ではあまり聞いたことがない。
帝国の歴史の中で、皇女しか皇位継承者がいなかった場合、皇女がそのまま女帝として即位することはあったが、クローディアの皇位継承順位は三番目だ。
ルヴェルグに万が一のことがあったとしても、上には兄たちがいる。そんな皇女の婿を、帝国の皇家の養子にする利点はない。