死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
リアンの深い青の瞳からは、もう迷いも恐れも感じられなかった。出逢ったばかりの頃は、不安げに揺れてばかりだったというのに。
「変わらず呼び続けると思います。ディアはエレノス様を、心の底から大切に思っていますから」
リアンの力強い言葉は、迷いや不安に揺れていたエレノスの心をまっすぐに射貫いた。淀めきかけていた菫色の瞳に、一筋の光が灯る。
エレノスは静かに息を吸い込み、そして吐ききると、リアンの美しい瞳を見つめながら口を開いた。
「フェルナンド殿下に、ディアは君といると不幸になってしまうと聞いたんだ」
ふたりは時を遡ってきたこと。そしてリアンの手によってころされたこと。何の根拠もない馬鹿げた話だと思ったが、フェルナンドの涙を見て信じてしまったのだとエレノスは改めて語った。
「…だからその前に、手を打とうとされたのですか」
リアンがそう静かに尋ねると、エレノスはゆっくりと頷いた。
「……ああ。私が愚かだったばかりに、結果としてディアをあんな目に遭わせてしまった」
嗚呼、とエレノスは崩れ落ちる。その姿は宝物を取り上げられた子供のようで、幼い頃の自分を重ねて見ているようだった。
あの頃の自分は、どうして生きているのか日々自分に問い、誰もが自分を悪魔の子だと囁き、罵っていたが、今は違う。
守るために必要な力は、クローディアとの出逢いがくれた。