死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「…温かいご飯と寝床、綺麗な服、新鮮な水。私の身の回りにあるものは全て、彼らがいるからあるもの。…当たり前のものじゃないんだわ」
クローディアははらはらと落ちていく涙を指先で乱暴に拭った。自分が悪いのに泣いてはだめだ。それに、こんな顔を見られてはアンナに心配されてしまう。
なのに涙が止まらないのだ。何も知らず、何も知ろうとせずにいた自分に腹が立ってしょうがない。
「…綺麗だね」
少年の囁きのような声に、クローディアは顔を上げた。
陽の光を受けて煌めいている青色の瞳に、ぼろぼろと泣いている自分の姿が映っている。
初対面の人の前で泣いている女のどこが綺麗だと思えたのだろう。
少年は小さく笑うと、さっき子供たちにしていたようにクローディアの頭を撫でた。
少女のような顔立ちをしているが、その手は白くて小さいクローディアのものとは違い、所々に擦り傷や剣蛸ができている。
「貴女がどこの誰なのかは知らないけどさ、貴女のようなお姫様やお坊ちゃん…所謂民がいてこそ成り立つ関係の上にいる方々っていうのは、たとえ民が眠らず働こうと、今日の食事を抜こうと、それが民の“義務”だからで終わらせてしまうんだよ」
義務という言葉は、クローディアによく勉強を教えてくれたローレンスが口にしていた。下の者には義務があり、上の者には責務があるのだと。