死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「爺よ、何を話していた?余計なことを話してはいないな?」
「ほっほ。余計なこととは何のことでしょうかのぉ。…皇女殿下の名付け親が公だったことや、初めて歩いた時に泣いて感動しておられたこととかですかな?」
「……爺」
いくらラインハルトが伯父とはいえ、名前を考えただけでなくうんと小さな頃から成長を見守られていたとは。
「ふふ、伯父様ったら」
密かに家族と同じように大切に想っていたことを知られたことが気恥ずかしかったのか、ラインハルトは誤魔化すように咳払いをすると、ウェイターを呼んでグラスを注文していた。
クローディアの知るラインハルトは、いつも険しい表情をしている自分にも他人にも厳しい人だった。
だが、時を遡る前の記憶がある今となっては、彼が自分のことを我が子のように想っていてくれていたことを知っている。
今日が終わったら、侍女たちに娘が父親に贈る物は何か聞いてみよう。そうしてラインハルトに日頃の感謝を伝えよう。そう考えたクローディアは、彼の好みを聞くためにもう到着しているであろうベルンハルトの姿を探した。
その時だった。
コロコロと、何かが足元に転がってきた。ゆっくりと視線を落とすと、そこには艶のある純白の玉が落ちていた。
見覚えのあるそれに、クローディアは息を呑んだ。
「──失礼、それは私のものです」
追い討ちをかけるように、その物の所有者の声が落ちる。自分の元へと転がってきた玉──海の宝石である真珠を信じられないという思いで見つめていたクローディアは、その声を聞いて背筋を凍らせた。