死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
一刻も早く、ここから遠い場所に行きたい。今のクローディアの頭にはそれしかなかった。
ラインハルトの指示で追いかけて来たのであろう護衛が追いつき、肩にショールを掛けようとしてくれたが、クローディアはそれを振り払った。
護衛の騎士に暫くの間自分から離れるよう命じ、庭園へと足を踏み入れる。そうして噴水の前で崩れ落ちたクローディアは、訳もわからずに溢れてくる涙を落としていった。
会場のどこかにフェルナンドがいることは分かっていた。だからあの日と同じ轍を踏まぬよう、ローレンスに着いていくことを選んだというのに、まるで運命とでも言うかのようにフェルナンドは現れた。
クローディアは今度もフェルナンドから逃げられないのだろうか。
あの腕に捕まり、物のように扱われ、閉じ込められ、またあの子を生んで──命を落とすのだろうか。
いくら違う道を選んで進んでも、結局また同じ場所に行き着くのだろうか。
(だとしたら、何のために私は──)
カサ、と。すぐ側から草を踏む音が聞こえたクローディアは、慌てて目元を拭った。
視界に入ったのは白いブーツ、紺色のロングコート。それを辿るように顔を上げていくと、深い青色の瞳と視線がぶつかる。
「……ディア?」
その声と姿に覚えがあったクローディアは、何度か瞬きをしたのちに声を絞り出した。
「………リ、アン…?」
目の前には、つい昨日会ったばかりの少年がいた。