【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。


「いいから、代わりに袋詰を頼んでもいいか?」

「あ、はい」

 この人は本当に、冷酷な人だ。 私を愛するつもりなんて、もっぱらないのだ。
 好きにならなくていいと、好きになってもらうことも期待するなと、彼は私にきっぱりと言った。

 だから私は、期待しない。期待もしないし、彼を好きにもならない。
 彼は、好きになってはならない人だから。

 もし彼を好きなってしまったら、私はどうすればいいんだろう。……どうなって、しまうのだろう。

「花純、袋詰め頼む」

「はい」

「キャンプ用品は俺が持ってくから、それだけ頼む」

 購入したものを袋詰めしながら、私は「分かりました」と答えた。

「終わったか?」

「はい」

「じゃあ行くか」

「はい」

 車の後ろのドアを開け、キャンプ用品などを詰め込む。

「花純、夕飯の買い物はどうする?」

「え? あ、します」

「よし、じゃあ行くぞ」

 私たちは夫婦だけど、手を繋いだことすらない。 愛がないって、そういうことなんだ。 
 妻なのに手を繋ぐことも許されない存在なんだ、私は……。

「あの……泰裕さん」

「なんだ?」

「……いえ、なんでもありません」

 夫婦って……何なのだろう。
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