【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
「あれ?言わなかったか? 俺、キャンプが趣味なんだよ」
「そうなんですね。……知らなかったです」
そう言った私に、泰裕さんは「そうか。言わなかったか」と言った。
「はい。知りませんでした」
「今度お前を、キャンプに連れてってやる」
「ありがとうございます」
泰裕さんとキャンプ……。想像出来ない。
「これなんか良さそうだな。テントデカいし」
「へぇ〜」
キャンプのことってよく分からないけど、テントが必要なのは想像つく。
「なんだ。不安か? 俺に任せておけば、大丈夫だから」
「あ、はい」
愛のない結婚とはいえ、私たちは夫婦だ。そして私は、彼に恩がある。
父親の借金を全額返済してもらっているという、恩が。
だから私は、彼を突き放すことなんて出来ない。 そんなこと、許されない。
「よし、買う物はこのくらいか?」
「そうですね。必要なものは、揃いました」
「じゃあ、レジに行くか」
「はい」
私たちはレジに並び、会計を済ませる。
「ここは俺が払う」
「え?でも……」
泰裕さんは優しいから、こうやって夫としての務めを果たしてくれる。
だけど私は妻として、何も出来ない。