【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。


 私を怒鳴りつけた泰裕さんの目は、怒っていた。

「……ごめんなさい」

 だから私は、泰裕さんの目を見れなかった。

「心配させるんじゃねぇよ!」

 そして泰裕さんは、私の身体をぐっと引き寄せた。

「……え?」

 訳が分からない。泰裕さんは、怒ってるんだよね? 私が勝手にいなくなったことを。
 だから……怒ってるんだよね? 

「勝手にどっか行くな。……心配しただろ」

「っ……どうして……?」

 どうして私のことを愛していないのに、私の心配なんてするの……?

「……え?」

「どうして……私の心配するの? 私は……私たちは、お互い愛していないのに……。どうして、心配するの?」

 私のことを心配する義理なんて、泰裕さんにはないはずだ。

「それは……」

「泰裕さんは私のことを好きにならないんですよね?……だったら、余計な心配なんてしないでください」

 私はなんて可愛くない女なんだろう。本当は泰裕さんが来てくれて嬉しかったのに。
 本当はすごくすごく、嬉しかったのに……。

「……花純」

「っ……お願いだから、私をこれ以上苦しめないで……」

 私は泰裕さんの妻だ。これは政略結婚だ。
 愛のない結婚だ。
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