総長さんは慰めたい。(短)


この時はじめて、私は誘拐犯の狂気じみた性格を知る。そうだ、呑気に担がれている場合じゃない。この人に連れ去れてみろ。絶対、変な事されるに決まってる!それは嫌だ、怖い!

でも、ふと思い出す。それは、この誘拐犯が手負いだという事を。




「(怪我をしたって言ってた。しかも、大けがだって……。今も治りきってないって本人が言ってたし……もしかすれば、私が暴れれば勝算はあるかも?)」




ゴクッと喉が鳴る。いつ行動に起こそうかと、身を固くした――その時だった。




「おい女」

「ッ!」




担がれた状態で顔を上げると、誘拐犯の顔が目の前にあった。それは私をのぞきこんでいる形だから、顔が逆さまだ。そんな状態で、初めて誘拐犯の顔を見る。

金髪の、目が見開かれた怖い顔。ギラギラと復讐心に燃えるその瞳の中に、私がハッキリと写っている。

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