総長さんは慰めたい。(短)

「死にますよ?」と私は本気で言ったけど、どうやらこの誘拐犯も本気で言葉を返したようだ。座っているのも限界なのか、誘拐犯はゴロンと冷たいコンクリートの上に横になった。

汚い地面にそのまま……と顔が歪んだけど、まあ動かれるよりは止血しやすいか。血も出にくいだろうし、と非難しないことにした。


本当に止血するものは何もないかと、辺りをキョロキョロする。だけど、倉庫の中に何かアイテムがあるわけでもなく……私は途方にくれて下を向いた。

すると――




「あ」




自分の手が目に入った。そして一本の指には、不器用に巻かれた白い布がある。これは、総長さんの制服。私のために、わざわざ破いてくれた制服だ。

そして、当たり前だけど私も制服を着ている。これは、布だ。

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