総長さんは慰めたい。(短)
「……いやいや、さすがに、それは」
変な思考が頭をよぎる。いや「変な」というのはおかしいかもしれないけど。でも、変だ。
だって私、誘拐されたんだよ?この人に、しかも脅されて怖い思いもした。それなのに、滅私奉公するなんて嫌だ。
「うぅ……いった……っ」
「……」
「いたい……うぅ……」
「……~あぁ、もう!」
私の頭の中に、一瞬だけ総長さんがよぎった。その総長さんは太陽みたいに笑っていて「人助けしたのか、偉いな!」と私を褒めながら頭を撫でてくれた。
そんな妄想を抱いてしまった。「完敗だ……」そう呟いた私の顔には、薄っすらと笑みが浮かんでいた。
これからする事は、全部、総長さんに褒められたいがため。いつの間にか私の心の中に、あの嵐のような総長さんが根を張っていたみたい。