総長さんは慰めたい。(短)


誘拐犯の相槌を聞くか聞かないかのタイミングで、今度は上の制服を破る。バストまでならセーフでしょ。たぶん。誘拐犯はまた「お前なぁ」と怒ろうとしてたけど、私に言っても無駄だと思ったのか、再び地面に頭をつけた。

そしてポツリポツリと、心情を吐露し始める。




「赤の総長が、それだよね。本当、うざい奴だよ。気に障る。目の上のタンコブだ。僕はいつも、アイツの後ろを歩いている気になる」

「後ろは、嫌ですか?」

「嫌だ。僕が皆の前を歩きたい。一番前だ。一番初めに景色を見るのは、この僕がいい」

「……そうですか」




キュッと制服を縛ると、誘拐犯は「うッ」とうめき声を出した。だけど、なんとか終わった。にわか知識だけど、たぶんさっきよりは血が出てないと思う。

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