総長さんは慰めたい。(短)
「後は譲るからさ、君があの子を温めてあげてよ。赤の総長」
「あ、温めるって、」
「安心して。僕たちは何もしていない。怪我した俺を、甲斐甲斐しく世話してくれたんだ」
「……信じられねーな」
「判断は任せるけどね」
しかめっ面を崩さない総長さんと、出会った時のように余裕の笑みを浮かべる誘拐犯。だけど、誘拐犯はツイっと総長さんから目線を外すと、振り返って私を見た。
「こいつの隣、嫌になったらいつでも僕の所へおいで。徒党を組んで待っとくから」
「へ?」
「ありがとう。君の言う通り、確かに一歩踏み出してみるのも悪くないって思えたよ。退院したら、覚悟しといてね」
「か、覚悟……って?」
「ふっ。じゃあね」
誘拐犯は答えを言わないまま、この場を後にする。総長さんも私も、ただ黙って彼の――柊沢さんの背中を見ることしか出来なかった。