一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
姫野さんがクロエさんとの関係を聞いたのは、噛み痕を見たから?
それとも……まさか、離れでの事を見られていた?

だとしたら、どんな顔をして姫野さんに会えば良いかわからない。


そう思っていると、クロエさんが深く歯を立てた。

突然の痛みに眉を(ひそ)めると、冷ややかな視線を返される。

「ヒメの事、考えてる?
もっと他に考えることあるよね」

自分を見下ろすその眼は、静かに怒っている様に見えた。

クロエさんが姫野さんの話をしたのに。
そんな事言われたら、気になるに決まってるのに。

「…狡い………」

「そういう事だったら言えるんだね。
して欲しいことは言えないのに」

Tシャツの中に人差し指が侵入し、腹を撫でた。

たった一本の指先に翻弄されて腰は反り、固く閉じた両膝がクロエさんの脚をきつく締めた。


「……二日間、我慢した意味がなくなりそう」

「え……?」

「おかしくなりそう、ってこと」


五本の指を腰に這わせられると、甲高い声が出た。
いつの間にか手首のリボンは(ほど)け、指と指はまた絡み合っていた。

シトラスと煙草の香りに混じって、クロエさん自身の香りがする。


その人の匂いが好きだという事は、遺伝子レベルで相性が良いという事。


前に何かでそう聞いた気がする。



――――――それが、本当だとしたら……。
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