一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
そんな事をぼんやりと考えていると、腰を撫でていた指が徐々に下りていった。


止めなきゃと思うのに、息が言葉を邪魔する。

甘やかに噛まれた首筋からは思考が奪われていく。


だけど、下着に指先が入り込むと一瞬で目の前は真っ暗になった。
絡み合う指を強く握ると、すぐに優しく握り返された。


「ごめんね、もうしない」


クロエさんはそう言って、固く閉じていた瞼に唇を落とした。


その口づけは、とても心地良かった。



「………今の、もう一回してください」


少し驚いた顔をしてから、クロエさんは瞼にゆっくりと唇を落とした。

二回目のそれは、唇の感触や熱がとても鮮明に深く伝わってきた。


瞼を開けると、クロエさんは口元を緩ませて髪を撫でた。


自分が瞼を閉じたのか、クロエさんが唇を近付けたのか。
どちらが先かわからなかったけれど、そのまま何度も瞼に口づけられた。


瞼に、額に、頬に。


落とされる唇はとても柔らかくて、温かくて。

ずっとずっと、この時間が続いたら良いのにと思った。





クロエさんは「カイト」とは、一度も口にしなかった。
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