一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
冷蔵庫を開けるといつもの様に朝食が用意され、付箋にはいつもと違うメッセージが書かれていた。

「連絡先」の三文字の下には、連絡先のIDと携帯番号。


スマホを開いてアプリのホーム画面から追加をタップし、IDを入力する。
何かの単語でもなく、規則性もない様に見える英数字の羅列がクロエさんらしい気がする。


クロエさんのアイコンは、ちぃちゃんだった。
真っ黒とか真っ白とか、初期設定のままにしていそうだったから、それは少し意外だった。


「ありがとうございます。登録しました」と送信して少しすると、返信がきた。
内容は、急にホテルに空きが出たらしく、明日海に行って撮影しようというものだった。


海に行くなんて、いつぶりだろう。
最後に行った海がどこだったかも、いつだったかも思い出せない。


まさかクロエさんと海に行くことになるなんて。

人生って本当に、何が起こるかわからないものなんだな。


初めてクロエさんと会った時、自分とは別世界の人だと思った。

今だって決して同じだとは思わないけど、近くなった。


毎日、一日の始まりと終わりに顔を合わせて。

毎日、「おかえりなさい」と言って、「ただいま」と返されて。

毎日、「おやすみなさい」と言い合って。


契約が終わったら、どうなるんだろう。

クロエさんは他の人と……。
カイトさんに似た人がいたら、また同じ事をするんだろうか。


そう思ったら少し胸がつかえた。

スマホが振動し、クロエさんかと思ったら、メッセージは茉莉香からだった。





彼氏に一泊旅行に誘われた、どうしよう。





―――内容は、そんなものだった。
< 127 / 186 >

この作品をシェア

pagetop