一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「潮の香りとか、海風が苦手みたい。
だから、よほどアオイちゃんを海で撮影したかったんだと思う。
確かにアオイちゃんと海って、合いそうだもの」

「…そうだったんですか」

「信じられない?
でもクロエからアオイちゃんと一緒に暮らす話を聞いた時も、きっと特別な相手なんだろうなぁって思ったわよ」

「一緒に暮らす話を聞いた時?」

「アオイちゃんと初めてここで会う前に、私からクロエに連絡したのよ。
どんな子と一緒に暮らすのか、って。
クロエもアオイちゃんも、お互いに未成年ではないけれど、やっぱり気になっちゃって。
アオイちゃんには悪いけど、少し……探りを入れるというか、聞いていたのよ。
気を悪くしたら、ごめんなさいね」

「それが普通だと思います。
謝らないでください」

探りだとは思わなかった。
身内としては、確かにどんな相手なのか気になるだろう。

「そしたら、ちぃちゃんがすぐに懐いたって、嬉しそうに言ったのよ。
いつもはもっと淡々と話すのに、そういう感じじゃなかったの。
きっと電話の向こうでは、良い顔をしてたと思う」

「クロエさんが嬉しそうに……?」

「あの子って、わかりづらいものね。なにを考えているのか。
でも、アオイちゃんはきっと特別よ」

自分が特別なんじゃない。
カイトさんが……特別なんだ。

あくまでカイトさんの身体に似た自分だから。

すべての理由はカイトさんで、自分じゃなくたってカイトさんに似てさえいれば、それで良いんだろう。
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