御曹司の溺愛から逃げられません
翌週月曜日。
私は時間よりも30分早く出勤した。
いつもならロッカーで制服に着替えるが秘書課だけは例外。
スーツ、もしくは準ずる格好で出社するよう通達があった。
この日に備え私は2着のスーツを新調した。手持ちのスーツは就職活動に使った紺のスーツだけだったからだ。
今日はライトグレーのスーツにカットソーを合わせてきた。

30分早く出社したが秘書課はすでに何人も出勤しており驚いた。

「お、おはようございます。今日からお世話になります柴山です」

おずおずと挨拶するとみんなの目が私に集まり、奥にいたメガネの男性が近寄ってきてくれる。

「おはようございます。室長の佐々木です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

私は勢いよく頭を下げた。

「今日は新社長のお披露目会見があるので朝からバタついているんです。しばらくは立川さんの補佐で動いていただきます」

そう言うと近くにいた綺麗な女性に声をかけた。

「立川さん」

呼ばれた彼女は私のところに来て優雅に頭を下げた。

「立川です。社長秘書を務めております。よろしくお願いいたします」

「柴山です。よろしくお願いします」

彼女は頷くと私を近くのデスクに連れて行き、今日の流れを説明してくれた。
新社長は会見に備えすでにホテルに移動しているとのこと。向こうで打ち合わせやヘアセットなどをして会場に入るようで私たちも名簿や配る資料、お土産を用意してそろそろ出発するらしい。

「早く来てくれてよかったわ。連絡していなかったのでどうしようかと思っていたの。でも社長が、早く来るはずだからとおっしゃっていたので安心していたのよ」

「社長が?」

「ええ。さぁ、そろそろ出ましょう。柴山さんはこれとこれを持ってくれる?」

なぜ社長がそう言うのかはわからないが時間がなさそうで立川さんが慌ただしくバッグを肩にかけると紙袋を2つ手にしていたので私も慌てて後ろをついていった。
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