御曹司の溺愛から逃げられません
「社長、そろそろいいですか?」

はっとして振り返ると後ろには室長がいた。助け舟を出してくれたようで、周囲の視線もそろそろ限界だろう。ひたすら社長である彼が私に頭を下げているんだもの。見て見ぬふりも限界だろう。

「柴山さん、立川さんのところで片付けを手伝ってきて」

「かしこまりました」

私はふたりに頭を下げるとその場を離れた。
正直ホッとした。
瑛太さんはまだ話がありそうなそぶりを見せたが私は何も考えられず、冷静になりたくて彼の視線から目を外した。

立川さんの元へ戻るとニヤニヤと笑っていた。

「柴山さんは社長直々の指名だもの。秘書につけて欲しいと1番に指示したのよ。うちでは有名な話。けど秘密厳守で、他の社員は知らないので安心してね」

「え?」

「秘書室はみんなで応援してるわよ。社長もいい歳なのに身を固めないのでみんな心配していたの。それがあなたを熱望するから、そういうことなんだろうって」

秘書室の皆さんはどんな理解をしているのかわからないが私は瑛太さんとの関係性が変わってしまったのを強く感じてしまう。
みんなからの視線を感じ、私の居心地は悪い。

「大丈夫よ。応援するわ。私たちみんな柴山さんが来るのを待っていたの。こんな可愛らしい方で嬉しいわ」

立川さんはそういってくれるが本当に私が彼と付き合うのを応援してくれるの?不釣り合いだと思われない?
何がどうなっているのか分からず、私の心はざわめいたままだった。
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