御曹司の溺愛から逃げられません
立川さんが出勤してきており、掃除や水やりのお礼を言われた。今まで当たり前のようにやってきた仕事でお礼を言われるなんて不思議。でも、ありがとうと言われ胸の奥が少しあたたかくなった。

「今日から少しずつ秘書の仕事を覚えていってもらいますね。社長に帯同するのは基本室長ですが、室長が会長に帯同する際には私が社長に付きます」

「はい」

私は仕事の流れについて説明を受けたがあまりの多さに驚いた。そのうち要領よく動けるようになるわよ、と言われたが全くそうは思えなかった。
電話の出方や来客の対応などから教えてくれるがお茶ひとつ満足に出せず、苦戦した。
最初はみんなそんなものよ、と相変わらず嫌な顔ひとつせず教えてくれるがきっと呆れていると思う。
やはりただの事務員ができる仕事ではなかったのだ。

「ひとつひとつ丁寧にこなしていけばいいの。焦る必要はないわ」

立川さんには励まされるが毎日が頭を下げてばかりの1週間だった。
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