御曹司の溺愛から逃げられません

つい私の涙腺は緩み、慌ててバッグからハンカチを取り出した。

「あなたの仕事は誰にでもできるように見えて、誰にでもできる訳じゃない。あなたの気配りが周りの仕事をやりやすくさせているの。だから社長が手元に呼び寄せたのも納得よ」

「あ、ありがとうございます」

ポロポロとこぼれ落ちる涙をハンカチでぎゅっと押さえる。

「泣くことないじゃない」

「すみません。でも……見ててくれる人がいたと思ったら嬉しくて。ありがとうございます」

「まったく、もう」

立川さんはハニカムような笑い顔をして私の頭をポンポンとしてくれた。

「でもね、本当に社長は柴山さんのことを気にかけてるのよ。あなたを見つめる社長の優しい視線に気がつかない？」

爆弾発言に顔が火照る。
瑛太さんが私を見つめている？

「少なくとも社長にとって柴山さんは特別な存在よ。社長の気持ちまで無かったことにしないあげて」