御曹司の溺愛から逃げられません
「柴山さん、どう?」

私は社長に同伴を頼まれてから室長に言われ橘建設についてや、当社との関わりについて少し勉強をし始めた。
けれど立川さんは別の準備に勤しみ始めた。
今週末に差し迫ったパーティーに着ていくドレスを選びましょう、と仕事終わりにサロンへ連れ出された。
こんな高そうなお店で買えません、と小声で伝えるが聞いてもらえず、ワンピースを渡されるとフィッティングルームへ押し込まれた。
ベージュのサテン地でオフショルダーの膝丈ワンピースでとても形が綺麗だった。
立川さんを待たせており、ここまできて試着できないなんてわがままは言えない。ひとまず試着をしてみると体のラインが綺麗に見え、背筋が伸びたように見える。普段の地味な私が清楚なお嬢さんになったような気持ち。何より、着心地が良かった。くるりと後ろ姿も眺めていると外から声がかかった。

「柴山さん、どう?」

あ、そうだった。待たせていたんだった。

「はい、試着できました」

フィッティングルームのドアを開けると立川さんの目が少しだけ大きくなった。

「いい。凄くいいわ! 柴山さんの良さが引き立てられてる感じ」

うん、うん、と立川さんは頷いていた。
店員にワンピースに似合うパンプスを頼むと、一緒にアクセサリーも運んできた。

「立川さん! 本当に私には買えませんから」

焦って小声で叫ぶも耳に届かず慌ててしまう。
< 75 / 101 >

この作品をシェア

pagetop